お恥ずかしながら、私も夜間頻尿に悩まされている。八味地黄丸を飲み、夏なのにレッグウォーマーで冷え対策もしているにもかかわらず、最近は夜中に少なくとも一度は目が覚めてしまう。これも年齢的な傾向なのだろうかと諦めそうになるが、この加齢現象には抗いたいと強く思っている。
そこで、自宅やジムでできることはないかとあれこれ調べた結果、私が目をつけたのが「ふくらはぎを鍛える」ことだった。まずは自分を実験台にして、その効果を検証してみたい。
夜間頻尿と「むくみ」の関係
そもそも夜間頻尿とは、睡眠中に排尿のために1回以上起きなければならない状態を指す。その原因は多岐にわたるが、主なものとして以下の3つが挙げられる。
- 多尿・夜間多尿: 24時間あたりの尿量が過剰になる状態(多尿)や、夜間のみ尿量が増加する状態(夜間多尿)である。寝る前の過剰な水分摂取、薬剤の影響、ホルモンバランスの乱れ、高血圧、心不全、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが原因となることがある。
- 膀胱容量の減少: 膀胱に少量の尿しかためられなくなり、頻繁に尿意を感じる状態である。過活動膀胱、前立腺肥大症、脳卒中やパーキンソン病などの脳・脊髄疾患が関連することがある。
- 睡眠障害: 睡眠の質が低下し、眠りが浅くなることで、わずかな尿意でも目が覚めてしまい、排尿回数が増えることがある。睡眠時無呼吸症候群も夜間多尿の一因となり得る。
これらの原因の中でも、自宅で取り組める対策の一つとして注目したいのが、下肢の体液貯留(末梢浮腫、いわゆる「むくみ」)に起因する夜間多尿である。日中に重力の影響で下肢にたまった体液が、就寝して横になることで体幹部の循環に戻り、血液量が増加する。これにより腎臓での尿生成が促進され、夜間の尿量が増え、頻繁な排尿につながるのだ。もちろん、心不全、静脈不全、腎臓病などの基礎疾患がある場合に特に顕著に現れることがある。今は自分がそうでないことを祈るばかりである。
正直なところ、私の夜間頻尿の原因が末梢浮腫かどうかは分からない。他の原因も考えられる。しかし、自宅でできる対策としては、まずはふくらはぎを鍛えることから始めてみようという“決めつけ”で挑戦する次第である。
「第二の心臓」ふくらはぎを鍛える!
この末梢浮腫による夜間頻尿の対策として非常に有効とされているのが、「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を鍛えることである。ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)は、心臓から遠い下半身の血液を重力に逆らって心臓へ送り返す重要なポンプ作用を担っている。
ふくらはぎの筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで、下肢の深部静脈を圧迫し、血液を上方向へと押し上げる。同時に、静脈内の弁が血液の逆流を防ぎ、効率的な静脈還流を促す。このポンプ作用が十分に機能しないと、血液やリンパ液が下肢に滞留しやすくなり、むくみとして現れるのだ。
ふくらはぎの機能を高めることは、むくみの軽減や血行促進だけでなく、心血管系への負担軽減といった全身の健康維持にも寄与する可能性がある。ウォーキングのような下肢の活動や、ふくらはぎポンプ刺激装置に関する研究は、ふくらはぎの活動が夜間頻尿の改善に因果関係を持つことを強く支持している。特に、日中や夕方に行うことで、夜間の体液シフトを未然に防ぎ、日中のうちに余分な水分を排出する効果が期待できる。
ふくらはぎトレーニングの健忘録
**踵上げ体操(カーフレイズ)**は、最も基本的なふくらはぎのトレーニングである。
- スタンディングカーフレイズ: 直立した姿勢で踵の上げ下げを繰り返す。主に腓腹筋の強化に適しており、初心者向けである。椅子の背などに片手を置き、踵をできるだけ高く上げ、2〜3秒キープし、ゆっくり下ろす。踵が床につく直前で切り返すのがポイントだ。膝は真っ直ぐに伸ばしたまま行う。
- シーテッドカーフレイズ: 椅子に座った状態で行うカーフレイズで、ひらめき筋を優先的に鍛えるのに有効である。ひらめき筋は遅筋線維が多いため、低重量で高回数行うことが推奨される。膝を曲げた姿勢で行い、ダンベルを膝の上に置いて負荷を増やすことも可能である。
- ドンキーカーフレイズ: 前傾姿勢で行うカーフレイズで、腓腹筋に強い刺激を与えられる。スミスマシンなどを使うと実施しやすい。
専門家への相談も忘れずに
ふくらはぎトレーニングは夜間頻尿対策として有効な場合があるが、夜間頻尿の原因は多岐にわたるため、これが万能な解決策ではない。特に糖尿病、高血圧、心疾患、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患が原因となっている場合は、その疾患の治療が優先される。症状が改善しない場合や悪化する場合、または夜間多尿以外の原因が疑われる場合は、泌尿器科医などの専門医に相談することが重要である。
私も効果を実感できたら、またご報告したい。
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