当初、抱いていた期待は「AIを使えば、文章作成など瞬時に、そして簡単に終わるはずだ」という、ごくありふれたものであった。ところが、現実は少し違った。一つのコンテンツを仕上げるのに、以前よりずっと長い時間をかけるようになったのである。
「AIを使ったのに、なぜ時間がかかるのか」と疑問に思われるかもしれない。しかし、それは決してGeminiが使いにくかったり、性能が低かったりするわけではない。
理由はむしろ逆である。Geminiは単なる作業代行者ではなく、優秀な「壁打ち相手」であった。Geminiとの対話を通じて、一つのテーマから次々と考えが広がり、「あれもこれも入れたい」という創造的な欲求が刺激されるのだ。アイデアを投げかけると、新たな視点や切り口を提示してくるそのやり取りが、私が持っていながら意識上に表出してこなかった発想を浮き彫りにしていく。
だからこそ、一つのテーマとじっくり、深く向き合う時間が増えていったのだ。
この「深く向き合う」過程で、私はある決定的な事実に気づかされた。
それは、「考えること(あるいは、考えながらアイデアを書き出すこと)」と、「それらをつなぎ合わせて、ひとまとまりの文章に構成していく作業」は、全くの別物だということである。
これまで私は、この二つを無意識に同時に行おうとして、思考が途切れたり、筆が止まったりしていた。しかし、Geminiがあれば、「考えること」だけに100%集中できる。浮かんだアイデアの断片をGeminiに渡すだけで、それらを論理的で読みやすい文章に「構成する」作業を肩代わりしてくれるのである。
この「思考と文章化の分離」がもたらす恩恵は絶大であった。
例えば、散歩中や休憩中にふと思いついた追加のアイデアも、Geminiに「この要素も付け加えて」と伝えるだけで済む。驚くべきは、ただ文章の末尾に追加するのではなく、文脈を読み取って、最も自然で効果的な場所にそのアイデアを溶け込ませてくれる点にある。自分で「さて、この一文をどこに入れようか…」と悩むストレスから解放されたのだ。
そして、驚きはもう一つあった。質の面での発見である。
Geminiの助けを借りて(もちろん、最後に自分の手直しは加えるが)作成したブログ原稿を、試しにAIチェッカーにかけてみたところ、「ほぼ人間が書いた文章です」と判定されたのである。AIが書いたと見破られないほどの、自然で質の高い文章を生成できる能力には、正直、舌を巻いた。
結論として、半月間Geminiを使ってみて、私の当初の期待は良い意味で裏切られた。
Geminiは、単に作業を早く終わらせるための「時短ツール」ではなかった。それは、私の内に眠る思考を刺激し、多角的に物事を考えさせてくれる、まさしく「思考のパートナー」と呼ぶべき存在だったのである。
制作に時間はかかるようになったかもしれない。しかし、それは思考が深まった証左に他ならず、結果として、私は「言いたいことを、より言い尽くせる」ようになった。この価値は、何物にも代えがたい。
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