瀉心湯という方剤名は経方でも存在する。しかしその症状や方意として心にダイレクトに関わることはない。経方医学ではあくまで「心下」が主座である。
それでは早速小瀉肝湯証をみていく。
小泻心汤
治心中卒急痛,胁下支满,气逆攻膺背肩胛间,不可饮食食之反笃者方:
突然の心の痛み、胸や気逆のため背中肩甲骨が痛み、飲食ができないまたは反って食べる重篤者。これだけ見ると狭心症や心筋梗塞の症状だ。
龙胆草栀子打,各三两戎盐如杏子大三枚,烧赤
上三味,以酢三升,煮取一升,顿服。少顷,得吐瘥。
龍胆について、症状に関連していると思しき作用は主除胃中伏熱(新修本草 蘇敬等 安微科学技術出版社p97、名医別録 陶弘景撰 中国中医葯出版社p97)である。これは私見であるがいずれ消化器系への清熱のイメージがある。
山梔子は無形の胸熱を清熱除煩する。清熱利湿。
戎盐は結局塩のことである。症状に関連していると思しき作用は療心腹痛(新修本草 蘇敬等 安微科学技術出版社p75) 主心腹痛(名医別録 陶弘景撰 中国中医葯出版社p174)である。
龍胆、山梔子、戎盐ともに単体で吐法の作用はない。ただし酢で煎じるとある。部分で経方で近いのは「酒」。生薬作用を血脈へ導くと考えられていたのかも知れない(江部洋一郎 経方薬論p59)。しかし酢は「醋」と考えるならば新修本草、名医別録とも消癰腫、散水気、殺邪毒(新修本草 蘇敬等 安微科学技術出版社p286、名医別録 陶弘景撰 中国中医葯出版社p256)であまり症状に積極的な症状改善の働きはしないようだ。その上いずれ吐法でるという。吐法というと経方医学の瓜蒂(江部洋一郎 経方薬論p19)の催吐作用を思い浮かべる。しかし使用経験が無いし図も思い浮かべることが出来ない。
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