「ちょっと見て欲しい。」
理事長がふいに近づいて来た。
「これなんか知っているか?MRIしても良いか?」
レントゲンを見た私は呟いた。埋没鍼だ。
これを見たのは3回目だ。
近畿で、一回目。
もう15年前くらい前か。
レントゲンに写る細長い複数の線状の陰影。
あらゆるところに、鍼が入っている。
そんな印象だった。
見ているだけで痛々しい。
私を指導してくれていた鍼灸師が眉をつり上げながら、吐き捨てるように呟いた。
「これは埋没鍼。鍼をカラダの中に入れっぱなしにするんだ。」
「え?そんなこと大丈夫なんですか?動いていたら傷つかないのでしょうか?そもそも痛くない?」
「想像できない。禁じ手。してはだめ。」
それから10年以上経った後、今の職場で再会で2回目。さらに先週。
改めて理事長が問いた。
「どうしたらいい?」
私は答えた。
「辞めた方が良いです。辞めましょう。」
体内の金属がMRIに与える影響は想定できない。
想定出来ないことはしてはならない。
その後実際に実施したかどうか、分からない。
いずれにしても禁じ手にまた再会した。
まだやっている治療師がいるのかと驚いた。
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