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葛根湯が「肩こり・背中の強ばり」に効く本当の理由 ~解剖学的深さと「運び屋」としての葛根

漢方医学

「風邪のひき始めには葛根湯」。

これはもう、日本人の常識と言ってもよいだろう。私自身、寒気を感じる感冒の初期には、このエキス剤を短時間に連続して服用し、速やかに治すことを常としている。

また、葛根湯は「肩こり」の特効薬としても知られている。

特に「項背強(こうはいきょう)」と呼ばれる、うなじから背中にかけての強い強ばりがある時に使われるが、なぜ風邪薬が筋肉のコリに効くのであろうか。

今回は『経方医学』の視点から、そのメカニズムと主役である生薬「葛根」の働きについて深掘りしてみたい。

1. その強ばり、実は「水不足」である

葛根湯が必要なほどの強い肩こりや背中の痛み。

経方医学によれば、この本質は単なる筋肉の緊張ではなく、「筋(すじ)の層における津液(身体の潤い)不足」にある。

風邪(ふうじゃ)という邪気が体に侵入すると、体は熱を発して戦う。この熱が、筋肉や靭帯を潤すべき水分を蒸発させてしまうのだ。特に葛根湯証では、「血脈の外、かつ皮膚の下」にある津液が枯渇している。

筋肉は水気が少なくなれば、ビーフジャーキーのように硬く縮こまる。これこそが、あの頑固な「項背強」(背中までの強ばり)の正体である。つまり筋肉を養う水分が枯渇し、うなじだけでなく背中全体に「几几(きき)」と表現されるような、鳥が羽を縮めるほどの強い強ばりが生じるのである。

つまり、葛根湯が必要な状態とは、深い層への邪の侵入によって、筋肉を潤す水が枯れ果てている状態だと言える。

3. 「胃気」に乗って水を届ける「運び屋」

では、この深い層の乾きをどう癒すのか。ここで登場するのが主薬の「葛根」である。

葛根の役割は、単に解熱することではない。その本質は、「胃の中にある津液を、胃の気(胃気)とともに背中の深い筋の層へと運び上げる」という働きにある。

イメージしてほしい。

背中の深いところで、水が枯れて筋肉が焼けつくように固まっている。そこに、葛根という優秀な「運び屋」が、胃から立ち昇るエネルギー(胃気)に乗って水を運び、渇いた筋肉の層へスーッと綺麗に行き渡らせるのである。

清らかな水が届けば、筋肉は柔軟性を取り戻し、強ばりは解け、閉じ込められていた邪気も追い出される。これが葛根湯が効くメカニズムである。

まとめ

葛根湯が肩こりや風邪の背中の痛みに効くのは、「胃腸の水分と胃気を利用して、深層筋肉の脱水状態を解消するから」である。

だからこそ、胃腸が極端に弱って水気がない時や、逆に水浸しの時には使い方が難しくなるが(そのために大棗や甘草で補給路を確保している)、この「胃気とともに汲み上げて、通す」というダイナミズムこそが、葛根湯の真骨頂なのだ。

背中がバリバリに張る風邪のひき始め。それは体が「背中の筋肉に水を送ってくれ!」と叫んでいるサインかもしれない。

 

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