毎日午前7時にブログ更新

杖道は突きであると思うんです

杖道

 以前もブログで報告した通り、今杖道の突きについてこだわりを持っている。

 岩手県杖道会の稽古後のことである。

「今の私のテーマは『突き』である。杖道は突きであると心に据え、日々鍛錬に励んでいる」

 畏れ多くも、私は指導者のS先生にそう申し上げた。するとS先生は、私の大胆な発言を笑って受け止め、こう助言してくださった。

「それは面白い。それなら、杖道の教本から『突き』に繋がる手順をすべて整理してみると良い」

 確かに、教本の型の中には、様々な形で突きの要素が散りばめられている。漠然と稽古するだけでなく、具体的な「突き」という視点から基本技と型を分解し、再構築することで、より深く杖道を理解できるのではないか。S先生の助言は、私の修行に新たな光を当ててくださった。

以下は、全日本剣道連盟の杖道解説書からの引用である。

【基本技】

  1. 返し突(かえしづき)
    この技は、主に水月を突くことを目的とする。

    • 用意の姿勢から:
      右本手の構えから、左手の親指を外し、手を返しながら杖を後ろに引いて両手いっぱいに取る。腰を十分に捻り、両足を交差し、右手をすべらせて上から後ろに返す。そして、杖先を水月につける。
    • 突き出しの動作:
      左足を一歩大きく踏み出しながら、右手で杖を真っ直ぐに突き出し、相手の水月を突く。
    • (左右交互に連続して行う場合):
      右手の親指を外し、手を返しながら杖を後ろに引いて両手いっぱいに取る。右手を後ろからすべらせながら上に回し、右足を踏み出すと同時に相手の水月を真っ直ぐに突き出す。
  2. 逆手突(ぎゃくてづき)
    この技は、杖を逆手に持って相手の水月を上から突くことを目的とし、さらに右本手打で顔面を打つ動作を連続して行う。

    • 用意の姿勢から:
      右本手の構えから、右手をすべらせて頭上後方に上げながら、腰を十分に捻り両足を交差させる。逆手のまま左手をほぼ肩の高さとし、杖を両手いっぱいに取って杖先を水月につける。
    • 突き出しの動作:
      左足を踏み出すと同時に、頭上から右手で杖を真っ直ぐに突き出して水月を突く。

【型】

  1. 二本目 水月(すいげつ)
    この形は、太刀で正面を切りかかってくるのをかわして水月を突き、さらに引落打を行うものである。

    • 水月を突く動作に繋がる手順:
      常の構えから右足を右斜め前に踏み出し、左足をわずかに移動させて体をかわす。左手は腰にとり、右手は杖の中央を握ったまま、水月を突く。
  2. 六本目 物見(ものみ)
    この形は、正面から切り下ろす太刀を左にかわし右小手を左本手打した後、返し突きをするものである。

    • 返し突きに繋がる手順:
      左本手打で右小手を打った後、腰を捻って返し突きの姿勢となる。右足から踏み出して水月を突く。
  3. 七本目 霞(かすみ)
    この形は、太刀が正面に切り付けてくるのを体当たりし、さらに繰り付け、相手が退くところを水月を突き、顔面を引落打するものである。

    • 水月を突く動作に繋がる手順:
      体当たりをした後、腰を捻って返し突きの姿勢となる。左足から踏み出して水月を突き、さらに引落打で顔面を打つ。
  4. 九本目 雷打(らいうち)
    この技は、太刀が二の腕に切りつける瞬間、水月を逆手突きし、さらに体を左にかわして脾腹(ひばら)を突くことを目的とする。

    • 水月を逆手突きする手順:
      相手が二の腕に切り付けてくるのに対し、左手を頭上に杖を斜めにして杖先で水月を突く。
    • 脾腹を突く手順:
      水月を突いた後、左手を下に、右手を頭上に杖を両手いっぱいに取る。左足をやや斜め前に進めつつ左手より杖を繰り出し、体を左にかわして左半身となり、杖先で右脾腹を突く。
  5. 十本目 正眼(せいがん)
    この形は、相手が柄に手をかけたところ、機先を制して水月を打ち、退くところの脾腹を突き、さらに水月を打つ技である。

    • 脾腹を逆手突きする手順:
      水月を打った後、腰を捻り右手を上にして杖を両手いっぱいに取る。左足を踏み出すと同時に左脾腹を逆手突きする。
  6. 十二本目 乱合(らんあい)
    この形は、多くの技を総合し、連携して一つの形としたもので、複数の突き技を含む。

    • 脾腹を突く手順:
      相手が右胴に切り付けてくるのに対し、両手を斜め前に張り出しつつ左手より杖を繰り出し、右脾腹を突く。
    • 脾腹を上方から突く手順:
      相手が正面に切り付けてきた後、右手を杖先にずらし、頭上へ両手いっぱいに取り、右手を逆に持ち替えながら左手から杖を繰り出し、左足から一歩踏み出し真半身となって、杖先で右脾腹を上方から突く。
    • 水月を突く手順:
      相手が右親指を切るのを避け、両手を頭上に上げて上体を前にそらし、真半身となって太刀を外し、右足を踏み出して水月を突く。
    • 左脾腹を突く手順:
      相手の正面斬りを避け、杖を下に下ろし、左足を踏み出して左脾腹を突く。
    • 咽喉(いんこう)を突く手順:
      相手が右小手を切り、咽喉を突いてくるのに対し、さらに右足から一歩大きく踏み込み、咽喉を突く。

 このように書き出すと、細かな体の使い方や、重心移動を緻密にすべき課題など、単に読み上げるだけでも新たな発見が生まれる。

 突きには、大きく分けて構えを変化させて(真半身からやや半身への変化)突く場合と、構えは変化させずに突く場合がある。重心移動はどちらの場合も必要であるが、特に重要性が増すのは構えを変化させずに突く場合であり、ごまかしがきかない。そして重心移動とは、体の中心を意識して精密に動作するということに尽きる。

 つまり、「突き」とは体の中心を意識した精密な重心移動である、ということが総論的なテーマになると考えた。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました