下痢症の漢方薬は最近では啓脾湯や五苓散のエキス剤くらいであまり使っていない。内科外来ではミヤBM細粒やイリボー、コロネルなどを処方することが多い。ロペミンは避ける。あるいは絶食して点滴時にはCVを入れて高カロリー輸液で対応してしまう。勿論その場合は入院して経過を見ることとなる。
最近では例外的に小児の下痢症に柴胡剤加減を生薬で処方して著効を得たくらいか。
そんな中で下痢症に少陰病の薬、四逆湯や白通湯は使ったことがない。最近、漢方の臨床を読んでいたら、なんとそれらの治験があって驚いた。下痢症の方に少陰病の二剤を使用しているのだ(暑熱における四逆湯、白通湯について 福田佳弘 漢方の臨床2024年12月号東亜医学協会p11-)、使って良いんだという思いで精読したがやはり適応に難渋しているようだった。
四逆湯は甘草乾姜湯に生附子、白通湯は乾姜附子湯に葱白を配薬する。葱白はネギで桂皮の弱い版である(経方薬論p68)。漢方の臨床の中で著者なりの視点で論を重ねている。とても参考になるが一部私の不勉強さで理解を超えている。結局四逆湯は伏陽であり、えいやっと鼓舞してやる必要がある。強すぎる守胃があるので守胃するための甘草などは不要である。一方白通湯は亡陽しており、胃気を強く鼓舞してはいけない。守胃出来ず漏れているので守胃をして、桂皮なんて強い解表はさけ、やんわりとした葱白を用いる。私はこのように理解している(経方医学1p198)。
ただし、この二剤の下痢症のは、私には絶食させてCVを挿入して高カロリー栄養をする人が適用に思える。今時外来でみるのは私には荷が重すぎる。
次同様の方が入院してきたら、あるいは入院中にそのような状態になった方に対して、丁寧に四診してみようと思う。あれ?脈浮だからこれは亡陽だな、などと心の中で呟くことにする。
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