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体外打に見た歩法の真髄 ― 「居て居らぬ」境地

杖道

 昇段審査を控えた高段者の先生方が熱のこもった稽古に励む傍ら、私は初心者への基本指導に当たっていた。しかし、指導という原点に立ち戻ったからこそ、皮肉にも一つの真理を見出すこととなった。

 ここ数日、私が執拗に追い求めている「極意の歩法」が、そこには潜んでいたのである 。

 今回の対象は、「体外打(たいはずしうち)」だ。

 これは制定形の中には組み込まれておらず、基本動作の中にのみ存在する。それゆえに、その特異な手順は以前から私の知的好奇心を強く刺激していた。

 前稿に引き続き、全日本剣道連盟の『杖道(解説)』を紐解き、その動作を確認したい 。以下は、右本手の構えからの流れである。

仕(杖側): 本手の構えから、左手を後ろに引き杖を両手いっぱいにとり、さらに右手を右膝上につけ、左手は左に伸ばし左肩の高さにとる。

(中略)……右足を左足に揃え左腕を頭上にとり、杖を右体側に下げ、右手は甲を内側にして下に伸ばしたまま体を直立して(太刀の物打を)外す。

ここから杖は後ろに下がりながら太刀を打ち落とし、顔を制していく。

※全日本剣道連盟『杖道(解説)』平成29年度版 p.77より引用・要約

 この動作の肝要な点は、残心の状態から打太刀の打ち込みを誘い、相手に「捉えた!」と確信させた刹那、その虚を突いて躱し、反撃に転じる点にある 。

 体外打において、仕杖は既に左足を後方に置いている。これは、武術の本質である「そこに居ると見せかけて、実は既に居ない」という状態を具現化しやすい構造と言える 。

具体的な工夫として、以下の解釈を試みている。

  • 重心の仮託: 表面的には残心を示しつつ、意識と重心の重きは既に後方の左足へと預けておく。
  • 「居着き」の排除: 打太刀が打ち込んでくる極限の瞬間に、右足を左足に引き揃える動作をトリガーとして、既に準備された左足の軸へ体を預け直す 。

 あからさまな予備動作は、相手に「待ち」の姿勢を悟らせ、技を死なせてしまう 。しかし、袴の中で密かに重心の配分を完了させておけば、外見上は「同時」の動作の中に、圧倒的な速度と余裕が生まれる 。

基本動作の中にこそ、高度な形(かた)へと通じる「理(ことわり)」が凝縮されている 。私の歩法への探求は、基本という名の深淵へとさらに潜っていくことになりそうだ。

 

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