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刺絡療法

肝気虚・胆気虚の治療方針:柴胡を使わない肝の治療と安神の胆

前回の記事では肝胆気虚の鑑別について触れたが、今回はその実践編として具体的な治療法剤と配薬の方針について整理する。なお、本稿は江部洋一郎氏、篠原明徳氏、張錫純の病機の解釈と配薬を参考に作成した。日常診療において「肝の病証」といえば、まず柴胡...
漢方医学

胆気虚と肝気虚の鑑別:精神症状と関前短脈の臨床的意義

日々の臨床において、肝胆の病証鑑別に悩まれる先生方も多いことだろう。特に「気虚」の局面において、胆気虚と肝気虚は混同されやすいが、その治療指針を明確にするためには厳密な鑑別が不可欠である。今回は、篠原明徳氏の著書『胆気虚の理法方薬と関前短脈...
漢方医学

鎮痛薬を飲んでも頭痛が治らない理由 〜「胃寒」と鎮痛薬乱用頭痛〜

前回に引き続き、考え方をまとめて覚え書きにする。「頭が痛いから鎮痛薬を飲む。しかし、またすぐに痛くなる…」このような悪循環に陥っている場合、それは現代医学でいう「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」である可能性がある。実は、この「鎮痛薬が効...
漢方医学

鎮痛薬が招く「胃寒」の頭痛—私の慢心を打ち砕いた一症例

近畿で漢方を学び始めた当時、私は漢方治療にすべてを捧げていた。漢方こそが医学のすべて。半端な西洋医学は、師匠に言われない限り使わない。特に性急な解熱鎮痛薬には、7年間ほとんど手を出さなかった。それでも使う時は、どうしても使わなければならない...
漢方医学

「さもありなん」の症例報告

先日、痺れだ痹症だと色々と書いた。 そういえば他に、黄耆桂枝五物湯の方意を使った症例はないものかと、手持ちの資料を探していた。すると、『漢方の臨床』2024年5月号(p.71)に目が止まった。「足のむずむず症候群」、恐らくレストレスレッグス...
漢方医学

痺れは黄耆桂枝五物湯へ回帰

傷寒論、金匱要略は紐解くたびに新しいテーマや知見を導いてくれる。 黄耆桂枝五物湯は金匱要略の「血痺虚労病」篇に登場する方剤だ。 不思議な処方である反面、これまではあまり重要視してこなかった。「尊栄人(そんえいじん)」に適用される、つまり運動...
漢方医学

その腹痛寒さにつき

とても寒くなってきた。冬期の急激な冷え込みに伴い、激しい腹痛や機能不全を呈する「寒疝(かんせん)」の症例に気を配る必要がある。 唐代の医学全書『外台秘要方』には、寒疝が「生命に関わる強烈な冷えの凝集」として定義され、陽気を回復させることの重...
漢方医学

COVID-19後の「死ぬほどだるい」倦怠感に、なぜ補気剤が効かないのか――「ガス欠の車」と四逆湯類

COVID-19のパンデミック以降、外来で増えている訴えの一つに、尋常ではないレベルの「倦怠感」がある。「だるくて風呂にも入れない」「一日中、横になっていても回復しない」「動こうとすると、鉛のように体が重い」こうした症状に対し、一般的には『...
漢方医学

大気下陥における数脈の機序―肺の虚と胃気の鼓舞

今回の経方医学研究会での発表において、肝になる部分はここだろう。 小児の倦怠感の症例。数脈(さくみゃく)下において脈状が定まらない状態を「参伍不調(さんごふちょう)」と捉えた。症状とこの参伍不調から「大気下陥(たいきげかん)」の適応と判断し...
漢方医学

【症例検討】チック症状:煎じ薬なら

先日、東洋医学学会誌にて非常に興味深い症例報告を拝読した。 西洋医学的な薬物療法で改善しなかった「持続性チック(口や瞼が勝手に動く)」に対し、漢方のエキス製剤を駆使して著効を得たという報告である。 治療された先生の弁証(診断)と、エキス剤の...