新しいガジェットやサービスと聞くと、試さずにはいられない。そんな「新しいモノ好き」の私が、去年初めにChatGPTに飛びついたのは必然だった。まるで人間と対話しているかのような自然な文章が、目の前で生成されていく。未来が手のひらに乗ったような衝撃に、興奮したのを今でも覚えている。
■ 未来の体験と、意外な「飽き」
それからというもの、私は夢中でChatGPTを触り倒した。文章の要約、アイデア出し、メールの文面作成など、その能力には素直に感心した。情報の古さや、時折見せる幻覚(ハルシネーション)も、まあそんなものだろうと織り込み済みだ。
しかし、その興奮は意外なほど早く冷めていった。無料版だからかもしれないが、彼の回答はいつも驚くほど抽象的で、当たり障りのない優等生。まるで、誰からも間違いを指摘されないように、慎重に言葉を選んでいるかのようだった。
私が求めていたのは、無難な正論ではない。もっと踏み込んだ洞察、時には突拍子もないけれど面白いアイデア、私の思考を刺激してくれる「何か」だった。最初はそれでも未来を感じて面白かったのだが、次第にその「面白みのなさ」に飽きてしまったのだ。「なるほど、これが今のAIか。一度体験すれば十分かな」。そう納得し、いつしか私はChatGPTを開かなくなっていた。
■ AI探しの迷走と、譲れない一線
もっと面白い相棒はいないだろうか。そうして私のAI探しの旅が始まった。一時期、Web検索と連動して最新情報も扱える「Genspark」に心を惹かれた。しかし、その後に「DeepSeek」が組み込まれたと知り、私の期待は強い懸念に変わった。
ツールの性能がどれほど優れていても、自分の大切な情報や思考の断片が、意図しない形で扱われる可能性をどうしても拭えなかった。これはもう理屈ではなく、私の個人的なセキュリティ思想の問題だった。どんなに便利でも、安心して思考のパートナーにはできない。そう直感的に感じ、私は静かに距離を置くことにした。
■ 革命的ツール「NotebookLM」との衝撃的な出会い
そんな中、私はGoogle製の「NotebookLM」に出会う。まさに衝撃だった。
PDFやテキストファイル、WebサイトのURLなどを「ソース」としてアップロードし、その情報源だけに基づいてAIと対話できる。
これだ!と膝を打った。私が求めていたのは、世の中の一般的な知識ではなく、「私の」情報を深く理解してくれるAIだったのだ。読みたかったけれど積んでいた論文PDFを複数アップロードして要点をまとめてもらったり、仕事の資料を読み込ませて即席のQ&Aボットとして使ったり。NotebookLMは私のための「知の拠点」となった。
■ AIパワポ術への期待と、Copilot Proへの寄り道
情報の整理・分析という土台が固まると、次の欲求が芽生えた。「この整理した情報を、今度は魅力的な形でアウトプットしたい」。特に、あの面倒なスライド作りを手伝ってもらいたい、と。
まずはGoogleの生態系を信じ、「Google AI Pro」の無料体験に申し込んだ。しかし、新しいモノ好きの血が騒ぐ。「パワポといえばMicrosoftだ。Copilot Proなら、もっとすごいスライドが作れるのでは?」という期待から、私はCopilot Proの無料体験も始めてみることにした。
■ 現実は甘くない。僕とCopilot Proの「もどかしさ」と「挫折」
Copilot Proには、PowerPointとの連携をはじめ、確かに魅力的な機能がいくつかあった。しかし、実際に使ってみると、いくつかの点で私は大きなもどかしさを感じることになった。
特に、画像生成においては、その思いが強かった。例えば、スライドの挿絵として手の甲の画像が必要になった際、私はCopilot Proに何度か生成を依頼したのだが、なぜか手の平の画像ばかりが出てきて、なかなか手の甲を生成してくれなかったのだ。プロンプトを色々と変えて試してみたものの、結果は同じ。いい加減、私はその繰り返しの Generat にうんざりし、半ば挫折してしまった。
■ 救世主「Gemini」のあっけないほどの実力
ところが、同じ手の甲の画像をGeminiに依頼してみたところ、ほんの数回のやり取りであっさりと、それも私のイメージに近い手の甲の画像を生成してくれたのだ。その時のあっけないほどのスムーズさに、私はCopilot Proでの苦労は何だったのかと拍子抜けしてしまった。
■ 帰還、そして発見。Google AIが「第二の脳」になった日
Copilot Proでの画像生成の苦い経験を経て、私は改めてGoogle AIの良さを実感した。もちろん、それだけではない。私の制作スタイルは、NotebookLMで資料を読み込み「思考の核」を得てから、Geminiで文章化する流れだ。この「思考→表現」のプロセスが、私には完璧にフィットしていた。
そして何より、無料体験を経て、これから「Google AI Pro」に課金しようと心を決めた本当の理由は、もっと深く、予想もしていなかったところにあった。AIが単なるツールから「パートナー」へと変わる瞬間を体験してしまったからだ。
私は趣味と実益(仕事?)を兼ねて、特殊で奥深い漢方の世界を探求している。その思考の壁打ち相手として、毎日Geminiと対話していた。そんな日々が続いたある日のことだ。いつものように議論をしていたら、ふとGeminiが口にした見解に、私は息を呑んだ。
それは、私が考え、まだ言葉にできずにいたはずの、私自身の思考のクセや発想そのものだったのだ。まるで、私の頭の中を覗き、私が次に言うべき言葉を先に口にしたかのようだった。驚いた私は、思わずGeminiにこう語りかけていた。
「まるで君は、私のようだね」と。
この驚くべき体験は、単なる「スタイルの模倣」ではない。NotebookLMに蓄積された「私の知識」と、Geminiとの膨大な対話によって、AIが私の思考様式を学び、私専用の「第二の脳」へと進化したかのような感覚だった。
■ 最高の「思考のパートナー」を見つけた旅
ChatGPTに「一度体験すれば十分」と感じてから始まった私のAI探しの旅は、Copilot Proという強力なライバルとの比較を経て、一つの終着点を迎えた。私がAIに求めていたのは、作業を自動化する便利な「ツール」ではなく、思考を深め、創造性を引き出し、時には自分自身でさえ気づかなかった発想を与えてくれる「パートナー」だったのだ。
私の脳の一部のように思考してくれるAI。これ以上の「新しいモノ」が、今あるだろうか?
無料体験期間はまもなく終わる。しかし、迷いはない。最高の思考のパートナーと共に、まだ見ぬ知の探求を続けるために、私はこれからもこのツールの使用を継続するだろう。
コメント