約1ヶ月前、私は自分自身のジャーナル(記録)システムを構築し、本格的な運用を始めました。
きっかけはYouTubeです。「ジャーナルシステムを作ることで、日々のレビューと目標設定、課題解決が非常にしやすくなる。そして入力は音声が最適である」という内容に触発されました。
しかし、実際にやってみるとすぐに壁にぶつかりました。私の日常には、職場や移動中など「静粛にしなければならないシチュエーション」が多すぎたのです。音声入力は確かに素晴らしいですが、それだけでは限界がある。結果として、テキスト入力の選択肢も残した「音声×テキスト」のハイブリッド方式へと行き着きました。
AIが実用段階に入った現在、ジャーナルは単なる思い出の記録や、検索窓から過去を引っ張り出すだけのツールではなくなりました。もっと柔軟で流動的な「自分の傾向」を抽出し、未来の課題を検討するための根拠、つまり「自己のトリセツ(取扱説明書)」へと劇的に進化しています。
この1ヶ月の実践で私のトリセツがどう書き換わったのか、そしてAIを使ってどのように情報を「知」に錬金しているのか。極めて実際的な私のシステムを公開します。
ジャーナルを死蔵させない「2つの絶対ルール」
このシステムを機能させるために、私が徹底しているルールがあります。
1. 極限まで正直に、具体的に書く(綺麗な文章は捨てる)
ジャーナルを記録する障壁が下がると、一つ一つの事象に気を配るようになります。「何となく過ごした」なら、その「何となく過ごした」という事実をそのまま記録します。
ここで重要なのは、「生の声をそのまま残す」ということです。
思考は色々な方向へ飛び火します。その「ノイズ」や「言い間違い」を含んだ原文こそが、後で検証する際の確固たるエビデンスになります。
最初は、Typelessなどの優秀なアプリをフローに組み込んでみました(現在もiPadでの別のテキスト作業などでは重宝しています)。しかし、ジャーナルにおいては文章が綺麗に「整形されすぎてしまう」ため、思考の揺らぎが消えてしまい、結局フローから外しました。
現在は、デバイスの標準機能である「ボイスメモ」でそのまま録音し、それをGeminiに文字起こしさせるという手作りのアプローチが最適解となっています。
2. 入力障壁の排除と「タイムスタンプ」の徹底
思いついた瞬間に記録できなければ意味がありません。入力デバイスはiPhone、Mac、そしてApple Watchを使い分け、シチュエーションによって音声とテキストを柔軟に切り替えます。
そして、入力の際には必ず「時間」を書き添えます。ボイスメモを録る時も、まずは「〇時〇分」と吹き込むことから始めます。このタイムスタンプが、後で情報を繋ぎ合わせる強力なフックになります。
情報が「知」に変わる、淀みない処理フロー
日々の雑多な記録をゴミの山にしないため、以下の手順で処理を行っています。
1. インプットと視覚情報のストック
時間を入れたテキストや音声とともに、関連する写真も積極的に撮影し、まずは「Google Keep」にストックしておきます。
2. ジャーナルへの落とし込み(一括化):システムの「キモ」
ここがこのシステムの最大の「キモ(核心)」です。集めたテキストデータやボイスメモをGeminiに投げ、要約と生データを作成させます。
実際に私が毎日使っているプロンプトを公開します。ご自身のAIに「優秀な専属秘書」として振る舞ってもらうための指示書です。
【初回入力用プロンプト】
あなたは優秀な専属秘書です。提供された音声データおよびテキストログを統合・解析し、私の「本日のジャーナル」を作成してください。
## 処理プロセス
- 解析: 音声・テキストの意図を汲み取る。
- 分類: 内容を「健康」「杖道」「思考」の3つに要約して振り分ける。
- 保存: 入力されたテキストや音声の書き起こしは、文末の「📝 タイムライン・詳細ログ」セクションに、省略せず「完全な形」で転記する。
## 出力フォーマット
📅 [YYYY/MM/DD] のジャーナル
## 💪 健康・フィジカル
- 要約: [数値、体調、食事内容の要点のみ]
## ⚔️ 杖道・稽古ログ - 要約: [テーマ、気づきの核心部分のみ]
## 🧠 思考・アイデア - 要約: [ブログのネタ、家族の問題、覚え書き、TODO、考察の結論のみ]
## 📝 タイムライン・原文ログ(ここは省略しない) - [HH:MM]
[ここには、入力されたテキストを一字一句変えずにそのまま記載する。音声の場合は、フィラー(えー、あー)のみ削除した完全な逐語録を記載する。長いブログ原稿なども要約せず全てここに残すこと]
以上、「上部で一覧性」を確保し、「下部で原文」を保存してください。
このプロンプトにより、一覧性とエビデンスの両立が可能になります。
さらに、日中に追加でボイスメモを録音した場合は、録音データをアップロードした上で以下の短いプロンプトを投げます。
【追加録音用プロンプト】
追加のボイスメモです。先ほどのジャーナル内容と統合して、今日のジャーナル全体を更新してください。
こうして出来上がった1日の原稿を、月別の「Googleドキュメント」に集約します。原稿ができたら、Keepにストックしておいた写真を、文章の文脈に合う最適な場所へ貼り付けます。
3. インボックスのクリア(アーカイブ)
使い終わったGoogle Keepのメモは、必ず「アーカイブ」します。これで常に未処理の情報だけが手元に残る状態を作ります。
4. レビュー(定期的な見返し)と応用
毎週日曜日に週のレビュー、最終日曜日に月のレビューを行います。得られた気づきから今後の方針を策定し、ブログ化やZettelkasten(永久保存メモ)への応用を探ります。
AI(NotebookLM)に「忘却」を委ねる
読者の皆さんが一番挫折しやすいのが「過去の記録を見返す」作業ではないでしょうか。
安心してください。私自身、過去の記録は忘却しています。人間は忘れる生き物です。だからこそ、AIに委ねるのです。私は毎週日曜日に、NotebookLMにGoogleドキュメントを読み込ませたいと思います。
「今週の私のハイライトと、感情の動きを全部要約して下さい」
するとAIは、私が無意識に何度も繰り返していたテーマをメインに拾い上げてくれます。拾われなかった内容も、いつか必要になった時に検索して掘り起こせる「知の地層」として眠らせておけばいいのです。
1ヶ月の実践で書き換わった「自己のトリセツ」
このレビューを繰り返した結果、2月の1ヶ月間だけで健康、知的生産、マインドのすべての面で「私のトリセツ」が大きく更新されました。
例えばダイエットへのアプローチ。単なる我慢ではなく「月に-1kgずつ元の(理想の)自分に向かって動いていく」という動的イメージへ切り替えたことで、過食衝動を客観視できるようになりました。「ナッツを食べない」という極めてシンプルな引き算の習慣に直感的に辿り着いたのも、自己観察の賜物です。レビューを重ねるうちに、「味やカロリー、満腹感も含めてもっと具体的に記録すべきだ」と次なる課題も明確になりました。
また、精神的な面での大きな気づきもありました。
漢方における古典の思索や、杖道の稽古における身体操作。そこで自ら疑問を呈し、解決策(仮説)を考え、臨床や実践の場で検証する。この知的で能動的なプロセスそのものが、私にとって最高の「心の安寧」であるとAIとの対話を通して明確に定義できたのです。
異質な点が繋がる「知の錬金術」
ジャーナルを続けていると、思わぬ化学反応が起きます。
先日、NotebookLMの中に「日々のジャーナルファイル」と「『輔行訣(ほこうけつ)』という古典医学書の経方医学的解釈文」という、全く文脈の異なるものを適当に入れてみました。すると、そこから思わぬ内容が結びつき、ダイエットに関するブログ記事が一つ誕生したのです。
まだZettelkasten(永久保存メモ)の完成形には到達していませんが、AIという知能を通すことで、日々の些細な気づきが強固な繋がりを持ち、新たな知を生み出すことを確かに実感しています。
最後に:あなただけのジャーナルを
AIが現れたことで、単なる想い出の記録ではなく、ジャーナル本来の目的が実現できるようになりました。私自身、このシステムの中で成長している最中であり、より多くのものを盛り込んで未来に生かそうとワクワクしています。


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