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Google Drive化の試み(その5)——沈黙の期間をどう生きるか?「増殖」と「変容」のダイナミクス

情報管理
  1. 4380枚の壁の前で

前回、Zettelkastenが臨界点に達するには、およそ4,380枚のカード、期間にして2年が必要だと計算した。

では、その臨界点を超えるまで、我々はひたすら沈黙を守り、修行僧のようにメモを投入し続けるだけでいいのだろうか。4,000枚を超えた瞬間に、ファンファーレと共にブックメーカーになれるのか?

無理だろう。ずっと無視し続けてきた相手に、ある日突然話しかけても会話が弾むはずがない。

Zettelkastenを良きパートナーに育てるためには、その蓄積期間中においても、少しずつ心を通わせ、関係性を構築していく必要がある。

  1. ルーマンは何を見ていたか

ルーマンは「書きたいテーマ」があって情報を集めたのではない。「何を書くか」を彼自身が恣意的に決めるのではなく、Zettelkasten内部の動態(ダイナミクス)を観察することで決定したという。

では、その「動態」とは何か。ただ永久保存メモを投入する行為そのものを指すのか?

違う。もしそれだけなら、ZettelkastenはEvernoteのような「ただの倉庫」に成り下がる。アトミックに分割された情報の断片は、文脈なしに検索で救い出そうとしても、かえって手間取るだけだ。

  1. 「増殖」と「変容」の交響曲

私は、ルーマンの言う「内部の動態」とは、2つの異なる動きの相互作用を指していると考える。

一つは、永久保存メモの「増殖」だ。

確かにカード一枚一枚の内容は固定され(静的であり)、一度書けば変更されることはない。しかし、その「枚数」は日々増え続ける。昨日より今日、今日より明日。この「不可逆的な増殖」こそが、システムが持つ第一の動態だ。

そしてもう一つは、インデックスカードの「変容」だ。

ルーマンは永久保存メモには枝番をつけることで内容を固定したが、インデックスカード(Schlagwortregister)はタイプライターで何度も打ち直し、常に更新し続けた。

なぜか。メモが「増殖」すれば、当然それを束ねる文脈も変わるからだ。関心の中心がズレたり、新たな視点が加わったりすることで、インデックスのタイトルやリンク構造は生き物のように形を変える。

固定された知が増殖し(量的な動態)、それを受け止めるための地図が変容する(構造的な動態)。

この2つの歯車が噛み合い、互いに影響を与え合う様こそが、Zettelkastenの「内部の動態」の正体ではないか。

  1. Google Driveにおける「動的インデックス」

では、ナンバリングを持たないGoogle Driveでこれをどう実践するか。

ここでのインデックスカードとは、「その文脈を代表するハブ(Hub)となるファイル」のことだ。

あるトピックに関心を持ってメモを投入する(増殖)。すると、既存のハブファイルでは収まりきらなくなる。そこで、新たな見出しを立て、リンクを張り替え、ハブファイルの構造を書き換える(変容)。

ファイルが増えるにつれ、インデックス・ファイルのタイトルも変わるだろう。調べたいとき、あるいは悩みが生じたとき、自分が貯めたGoogle Driveのファイル群にアクセスする。その一連の動作そのものが、またインデックスのタイトルに影響を与える。

  1. Geminiと共に臨界点へ

現代には、ルーマンにはなかった武器がある。GeminiのようなAIだ。

蓄積されたGoogle Driveのファイルを元に、AIに相談を投げかける。AIが文脈を読み解き、新たな視点を提示する。その対話の結果、私の関心はまた変化し、インデックス・ファイルのタイトルが更新される。

そうやって、投入し(増殖)、整備し(変容)、AIと語り合う。

この動的なサイクルの回転数が極まったとき、枚数とは無関係に、私は「書かずにはいられない」という臨界点に到達するのかもしれない。

 

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