- Google Driveで「束」を再現する
前回の問いに戻ろう。Google Driveで、あの物理的なカードの束を繰る(くる)感触は再現できるのか。
結論から言えば、**「プレビュー機能」**がその答えだ。
具体的なワークフローはこうだ。
まず、大枠のテーマのインデックス(キーワード)を参照し、ここかなと思われる語句をGoogle Driveの検索窓に打ち込む。
ここで重要なのは、ファイルを一つずつ開かないことだ。検索結果リストに対し、Google Driveの「プレビュー機能(キーボードの『P』や目のアイコン)」を作動させる。
矢印キーで次々とプレビューを送っていく動作。これこそが、デジタルにおける「カードを繰る」体験にほかならない。
中身をパラパラと確認し、「ここだ!」という文脈を見つけた瞬間に、作成中のメモとリンクさせる。もし執筆中のプロダクトがあれば、例のTarget:タグを使って即座に接続する。
この高速なプレビュー巡回こそが、私がGoogle Driveに見出した「対話」のインターフェースである。
- パートナーとなるための「3つの要素」
Zettelkastenが単なる倉庫ではなく、対話可能なパートナーとなるためには、以下の3つの要素が不可欠だと考える。
- 投入の工夫: 既存の文脈にどう接続するか(=プレビューによる探索)。
- 観察と出力: 箱の内部で起きている動態(ダイナミクス)を観察し、そこから驚きを得ること。
- 熟成の時間: システムが臨界点に達するまでの物理的な量と時間。
1つ目の「投入」はプレビュー機能で解決した。問題は残りの2つ、特に「熟成」である。
- 4380枚の壁
2つ目の「内部動態の観察」——つまり、システムが予想外の組み合わせを提示してくる現象は、まだ私のGoogle Driveでは起きていない。
なぜか。それは圧倒的に「量」が足りないからだ。Zettelkastenが対話相手として覚醒するまでには、ある程度の枚数と期間が必要なのだ。
偉大なるブックメーカー、ルーマン氏のペースを参考に試算してみよう。
仮に1日5枚の新規永久保存メモ(Permanent Notes)を作成するとする。
その生活を2年間続けたとして、$5枚 \times 365日 \times 2年 = 3,650枚$。
最低でも4,000枚〜5,000枚。これが「臨界点」の目安となるだろう。
- 結論:その時、何が見えるか
数年後、私のGoogle Driveに4,380枚以上の相互リンクされたファイルが蓄積された時、果たしてそこにはどのような景色が広がっているのか。
ルーマンが体験したような「驚き(Irritation)」は生まれているのか。それとも、単なるゴミの山か。
正直に言おう。それは今のところは分からない。
だが、分からないからこそ、やる価値がある。
今日からまた、1枚のメモをプレビューの束の中に滑り込ませる。その積み重ねの先にしか、Zettelkastenというパートナーは現れないのだから。


コメント